机を後ろに寄せて
教卓は黒板のほうへ
青いスチールパイプのほうきを
床の罫線に沿わせて曳く
両手の円運動が
地面に水平になるのを
我知らずたしかに過ぎている
物理や数学は
すでに消しがたく宿っているのだけれど
今はまだ喃語を話すのみで
母音が鼻骨を震わせても
たな引く昼間にあらかた吸われてしまう
それでもわずかに残った響きは
毛羽立った化繊の穂先を
上履きに何度も踏ませ
灰色のわたぼこりになって現れる
漠たるかたちは掃きよせられ
机の足にほうきがあたるその
とき
を少しだけ出し抜いて
を少しだけ出し抜いて
窓の外の空はこつりと鳴り
ひと筋の風が
目に見えて胸の前で反り返る
誰かが前にすれちがったものと
私もすれちがったことがあった
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